僕だけが知らぬ街

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バスとタクシーと、時々、自転車

猛暑日

メルボルン

 

私は自転車が好きだ。

特にこのメルボルンという街で乗る自転車が好きだ。

 

南半球に位置するここオーストラリア、メルボルン

雰囲気のある街並みが素晴らしいのは当然ながら、壁に描かれたグラフィックアートはその街並みにスパイスという名のアクセントを加え、ストリートのミュージシャンが奏でるメロディーはその景観を彩り、道行く人魅了している。

 

そんな街並みを横目に、私は自転車に跨り、夏のメルボルンの風を切るように走っていた。

私はこの瞬間がたまらなく好きだ。

 

夏のメルボルンは湿気などほぼ皆無で、一度木陰に入ってしまえば、爽やかな風が駆け抜ける。

日本のあのジメジメとした夏からは想像もできないほどの清々しさがここにはある。

 

私はこのメルボルンの夏が好きだった。

真夏には40度に達することもあり、多少暑さに注意も必要なのだが、私にとってはその暑さも含め、すべてが心地よく感じていた。

 

 

はずだったのだが。

 

 

 

信号に差し掛かった。

赤に変わった信号を確認し、ゆっくり停車する。

片足だけ地面に着く形で、信号が再び青になるのを待つ。

 

すると、突然それはやってきた。

ブーンという腹ただしい音とともにそれは、私の頭の周りを忙しなく飛び始めた。

 

ハエだ。

 

あの害虫として名高く、私の嫌いな虫ランキングにも毎年上位に食い込んでくることで有名な、あのハエだ。

この素晴らしい日常を壊すには十分なほどの鬱陶しさを伴いながら、そのハエは私の頭の周りを飛び続けている。

 

はあというため息とともに、手で払い除けてみる。

一旦はどこかへ行った素振りを見せつつも、ハエはすぐに私の頭の周りを飛び始める。

 

不快だ。

とても不快だ。

 

私の素晴らしい日常がこのハエ一匹に侵されていくのがわかる。

 

そうこうしてるうちに信号が変わった。

びゅん、とスピードを上げ、自転車を飛ばす。

 

周りの風景が流れていくのを横目に、その風景とともにハエとハエに向けられた腹ただしさを置き去りにし、走り出す。

風を切り、駆け抜ける。

私の両脇を素晴らしい風景が駆け抜けていく。

 

これだ。

これなんだ。

私の素晴らしい日常は。

 

いつもの素晴らしい日常が帰ってきた。

もう私の日常を邪魔するものはいない。

 

 

500mほど走っただろうか。

また信号に差し掛かった。

停車し、片足だけ地面に着く形で止まる。

 

ブーン

またそれは、当たり前のようにやってきた。

 

ハエだ。

またハエだ。

 

しかも今回は、1匹増えて2匹も私の頭の周りを飛び始めている。

 

手で払い除けるが、それが無駄なことは重々承知している。

一旦は退くも、すぐにまたハエ2匹は私の頭の周りを飛び始める。

 

不快だ。

すごく不快だ。

 

信号が変わるのがとても遅く感じるのは、この腹だたしさが原因なのだろうか。

 

ようやく、信号が青に変わる。

びゅん、といつにも増してスピードを上げ、走り出す。

もちろん、ハエは置き去りだ。

 

 

夏の日差しが眩しい。

ほとばしる汗がまた心地よい。

家に着いたらシャワーを浴びて、冷やしていたコーラを飲もうかなどと、帰宅後の楽しみに思いを馳せていると、また信号が私を止める。

 

停車し、片足だけ地面に着く形で信号が変わるのを待つ。

 

ブーン

またも、それはやってきた。

 

ハエだ。

もはや、恒例行事だ。

 

しかも今度はさらに1匹増えている始末。

3匹が私の頭の周りを飛び続ける。

 

なんだ。

なんなんだこれは。

そもそも、なぜ頭の周りを飛ぶ?

 

楽しいのかそれは?

それとも臭いのか?

私の頭は臭いのか?

排泄物と同じ匂いがするとでも言うのか?

 

そんな疑問が頭を埋め尽くしていけばいくほど、それに比例するように私のイライラも増幅していくのがわかる。

 

手で払い除ける。

もはや、意味のないことはわかっているが、やらずにはいられない。

 

信号が変わる。

びゅん、と今日1番の力をペダルに込め、私の素晴らしい日常へ戻っていく。

 

 

それにしてもだ。

私が信号で止まる度に必ず新しいハエが出現するのは、なぜなのだろうか。

そんなにハエは大量発生しているのか。

ただ、そんなにたくさんのハエがいるとも考えにくいような気もする。

 

まさか、と一つの疑問が頭を過ぎる。

まさか、すべて同じハエという可能性はないだろうか。

 

ハエがこの世に生まれ、どのくらい経ったかは知らないが、何百年と続くハエの歴史の中で、進化に進化を重ね続け、現在ハエは人が自転車で出せる速度と同等のスピードで飛べるようになったのではなかろうか。

さらにその中でもより早いハエ、言うならばハエ界のウサインボルトのようなハエの精鋭たちが3、今日たまたま私を飛びながら追尾しているのではないか。

 

そんなことを考えながら自転車を走らせていると、もの珍しい看板が私の左横に流れていったのを確認した。

それを目で追うように首を90度動かし、看板を見ようとしたその時、自分の左肩が視界に入ったのがわかった。

 

 

その瞬間、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。

 

 

それはそこにいた。

おそらく、ずっといたのだ。

ただ、私が気づかなかっただけなのである。

 

 

そう、その光景とは、

 

 

ハエが2匹肩に止まっていたのだ。

 

 

私が出すスピードに耐えるかのようにその2匹は身を縮めながら、必死に私の左肩に食らいついているのだ。

 

なんということだ。

こんなことがあっていいのだろうか。

 

ということはだ。

ハエはずっと私の肩にのっていたことになる。

ハエはけっしてハエ界のウサインボルト的な存在だったわけではなく、ただただ私の肩にのっていたのだ。

 

ということは、である。

私はある一定の距離の間、ハエたちを乗車させてしまっていたのである。

要するにハエたちにタクシーのように使われてしまったのだ。

しかも知らぬ間にである。

私はウーバーかっ!というツッコミを胸の中で入れつつも、思考は次の段階へと繋がっていく。

 

いや、それだけではないのではなかろうか。

というのも、ハエは最初1匹だったのに対し、信号で止まる度に増えていったではないか。

ということは、信号で私を待ち伏せていた可能性もある。

 

私はバスかっ!と、本日2回目の胸中ツッコミが入る。

 

仮にハエたちが待ち伏せをしており、私のような自転車に乗ったものを待っていたと仮定すると、私はタクシーというより、バスという表現が近くなるだろう。

そして、ハエたちはそのバスの乗客で、さしづめ信号はバスストップである。

 

これには恐れ入った。

まさか、知らぬ間にバスとして利用されていたとは。

 

ここで思い出したかのように右肩にも目をやると、そこにはもう1匹のハエ、もとい乗客の姿が。

 

はあーとため息を大きく出した後に両肩を払い、今度こそハエ達を置き去りにする。

下車させるといった表現の方がよかろうか。

もちろん、運賃などはもらっていない。

代わりに少しのイライラだけを残して、ようやくハエは姿を消した。

 

まさか、自転車に乗っていただけの私が知らぬ間にタクシーやバスとして利用される日が来るとは。

しかも乗客はハエなんて。

 

人生何が起こるかはわからないなどという表現は、この一連の流れには少しばかり大げさになってしまうかもしれないが、時に人はこの日の私のように自分の意思を介さずして、知らず知らずのうちに見ず知らずの誰かに利用されてしまっているのかもしれない。

私のように、見ず知らずの人ではなく、虫に利用されることはごく稀だとは思うが。

 

と、こんな馬鹿げたどうしようもない出来事から、無理やり教訓を得るとするならば、こんなところではなかろうか。

 

これからワーキングホリデーでメルボルンに来る方には、ぜひこんな馬鹿げた経験をしないよう注意して頂きたい。

 

あなたは乗っているようで、実は乗られているのかもしれない。

 

夏のメルボルン、ハエと暑さにはご用心。

 

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